沿革 -新月伐採研究の始まり〜

文:増田正雄(初代理事長)

1 新月伐採研究の動機
 「月齢に従って適切な時期に樹木を伐採すれば、良質な木材が得られる。」と書いた2冊の本がある。『健康学雑録』(1986刊)と『木とつきあう智恵』(1996年ドイツ語刊)の二つの本である。

 前の著書は生活の知恵として珍重したが、後の著書は森林の運命を担う公共性の高い内容であり、日本語版を出版するにあたってその信憑性を確認する必要があった。そこで森林や木材そして建築などに携わる専門家を訪ね歩いたが、自ら実証実験を試みようという人はいなかった。それでは自分で実証実験をやるしかない。

2 新月伐採研究の始まり
 2001年の秋。秋田県と神奈川県の二人の友人が私の呼びかけに応じそれぞれに実験樹木を提供し率先して実験を担ってくれた。

 【秋田県の伐採実験】は因子と効果の関係がわかるように8本の杉を直行配列表に仕組んで伐採しそのまま数ヶ月放置し、後に山出しして性能を見た。8本の試験材を大きなお椀を各々11個づつ作って比較した結果、顕著に差がついたのは「割れの差」であった。満月伐採は過半数が割れたのに対して新月伐採の木は割れゼロであった。更にオニグルミの実験では満月伐採の方が含水率が顕著に高かった。

 【神奈川県の伐採実験】では2本のミズキで満月伐採と新月伐採を比べたが満月伐採は「カビ」と「割れ」が多く、新月伐採は「カビ」はなく「割れ」も少なかった。

3 新月伐採研究の土台づくり
 2002年オーストリアに有志5名で『木とつきあう智恵』の著者エルヴィン・トーマ氏を訪ね初期の新月伐採実験の成果を報告し交流を深めた。翌2003年にはトーマ氏が来日。動き出していたプロジェクト名を新たに「新月の木」と命名し、木の伐採処理法を「新月伐採」と呼称して、国内4県で講演会を開催し沢山の人の関心を集めた。

4 新月伐採研究の広がり 実用化研究 
 2004年5月にNPO新月の木国際協会を設立すると新月伐採による木質向上の実用化実験は加速し、特性を明らかにしていった。 新月伐採法に従って処理した木は、抗菌抗虫・割れ・曲がり・形状安定性・加工性・香り・光沢など、木質向上の効果をあげた。そして、杉・ミズキ・松から始めた実験は、その輪を他の樹種にも広げていく。 更に、傍証実験として始めた「稲の新月刈り」の効果は、虫害・カビ害を防ぎ、香り・味、光沢の持続に及ぶ。以降、実験は植物全体を視野に入れて展開している。

5 月の働きについての研究  電磁波説 
 月齢が樹木の質に影響を及ぼしていることは分かったが、月と木を繋ぐメカニズムがわからない。2007年初夏に予期しない発見があった。 ある日、家の近くに蛍が出はじめたので駆けつけると空には三ケ月があった。このとき一瞬ひらめいたのは「蛍はいつ光る?」「月を見て光るのか?」という設問である。

 夏の夜を二度費やしたが、蛍の発生数の観測で「蛍火は新月を過ぎると急激に発生し、満月を過ぎると急激に減って行く」ことが明らかになった。

 蛍の発光の化学的メカニズムは既知のことであり文献では「蛍は自ら持っている酵素を使いATP(触媒)の助けを借りて発酵して光を放つ。」とあるが、今のところ「月の関与」を証明する情報は見当たらない。

 樹木(植物)では見せてくれない月の働きを蛍(動物)が視覚として見せたのである。

 2005年頃、生きものは水で生きているのだから月に水が有ったなら、月の水の電磁波を触媒として月齢という周期的作用により生物は生かされているのではないかと考えていた。しかし、月に水は無いだろうということが科学の定説であった。

 ところが2008年、インドの探査機が月に水有りという情報を持ってきた。それなら蛍の発酵(発光)説も生きてくるかもしれない。分かっている科学だけでは間に合わない世の中である。

 2008年は月の電磁波説についての議論が活性化した年であった。月が放つ電磁波の強弱が受け手の生物(樹木)に影響を与えるのではないかと考えて物理学者を招聘して尋ねたが,月齢の変化は生物に影響を及ぼすほど大きくはないだろうという。

 最近の話である。スイスに巨大な加速器(素粒子の実験に用いられる)が建造され始動を始めたが、直後から運転不能に悩まされていた。結局その原因は月齢に有ったと分かって対処したという。

 月への目覚めは始まったばかりか。

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